光でがんの取り残しをなくす

五稜化薬株式会社

事業内容

がんを蛍光で見える化し、取り残しリスクを最小化する画期的な機能性色素を開発。がん外科手術中に微小な標的部位を高感度且つ選択的に可視化するActivatable 蛍光プローブ(ナビゲーションドラッグ)の開発を行うナビゲーションドラッグ事業と、研究用機能性蛍光プローブの製造・販売を行う研究試薬事業の2事業を展開しています。

ヒト食道がん切除検体への適用例。(A.スプレー前 B.スプレー後、10分経過)

マネジメントインタビュー

丸山健一
代表取締役

会社設立までの経緯

創薬支援事業を目的として2010年に札幌にて五稜化薬株式会社を設立しました。

研究者としてキャリアを積んでいく中で、共同研究を行う企業がどんどん大きくなって行くこと。研究者として自信をもって作った製品が全く売れなかったこと。また、いつかは自身で事業を立ち上げたいという3点が理由となり、ビジネススクールへ通い始めました。その後、ベンチャーキャピタル(VC)で3年ほど投資経験の後に会社設立に至りました。

創業の地に札幌を選んだ理由は、元々、バックグラウンドが研究者であり、研究試薬のユーザーでもあったので、精密有機合成に強い日本にて本事業を立ち上げることに意義を感じており、北海道大学との繋がりがあって環境が整っていたためです。

設立後の日々/入社後の日々

VCで、バイオベンチャーを中心に投資担当をしてきたので、比較的スムーズに事業の立上げもできるであろうと考えていましたが全く違いました。経営者は従業員、そしてその家族の人生を預かるという意味でキャピタリスト時代とは責任の重みが全く異なりました。会社設立後は本当に苦労の連続でした。それでも自分の好きなことをしている、世界初の製品を作っているという実感があり、苦労をあまり苦労とも思わず、毎日が楽しく充実していました。

また物を作って販売するというのは、商売の基本であるので非常にやりがいを感じます。初出荷のときのことは今でも鮮明に覚えており、これこそまさに物づくりをする会社経営の醍醐味であると実感しました。

本来、素材・化学メーカーでは、プラントを作って製品を大量に合成するという発想となりやすい、と思いますが、研究試薬市場ならびにナビゲーションドラッグ市場においては、製品が数ミリグラム単位であるため、1グラム作っても大量合成というスケールになり、小資本での立ち上げが可能でスタートアップ向きと言えます。中にはマイクログラムで数万円というものもあり、少量多品種対応により従来の製造業の視点を変えるような事業の可能性を検討していくことも重要だと考えています。

今後の事業展開

当社は札幌に本社があるということが特徴の一つです。したがって、製薬会社志望のUターン人材の受け入れや、子育て世代の主婦層の受け入れも可能です。また博士号をもつ研究者としてのキャリア研鑽する場所としても活用して欲しいと思います。研究者という立場ではあるものの事業会社にてビジネスを経験することにより、将来の可能性をより広げて欲しいと考えています。

ナビゲーションドラッグ事業においては現状パイプラインのある乳がん、食道がんだけではなくほかの癌、他の疾病にも適用できるようにしていくために日々、開発を行っています。特に疾病者数の多い消化器系の癌に関して、当社の技術による可視化を目標にしています。可視化することにより、外科医のテクニックや熟練度に関わらず、均一で高い手術効果を患者さんに提供することができれば、多くの人の命を救うことが出来ると考えています。また、可視化だけではなく、将来的には定量的に装置でも検出を可能にするため機器メーカーとの協業も行う予定です。例えば、ロボットの目を使った、ナビゲーションサージェリー(手術ロボットを用いた手術)の実施時には五稜化薬のナビゲーションドラッグが必須、というようなキーコンパウンドを制する会社になることを目指しています。同様にAIなどの人工知能を用いた画像診断事業にもこのナビゲーションドラッグを活かすことができると考えています。

将来、「ナビゲーションドラッグ=五稜化薬」という構図が一日でも早く実現できるように、患者様のために日々、研究開発および事業を推進していきます。