To harness the potential of microbiomes(微生物の可能性を引き出す)

Boost Biomes, Inc.

事業内容

当社は、独自のプラットフォーム技術を利用し、食や農業などの用途における新規微生物製品の研究開発を行うスタートアップです。

当社技術は、膨大な微生物の中から互いに存在することで相乗効果を発揮し活性や増殖能に優れる微生物群を、迅速・高精度に探索できるものです。観察的な実験データのみを用いるのではなく、バイオインフォマティクスを用い微生物相互作用の仮説構築が可能という強みを保有しているため、短期間で微生物1種類では得られない高い効果を有する製品開発が可能です。また微生物を利用するあらゆる用途に応用出来ます。

微生物は、複数が相互作用する共生関係を構築することで、その活性や増殖能力が著しく向上しますが、土壌1g中に1000万もの微生物が存在すると言われる様に膨大な微生物の組合せの中から優れた微生物の組合せを探索することは極めて困難です。そのため、既存製品のほとんどが単菌を用いるものです。

当社の独自技術を用いることで、微生物製品の開発に成功しました。当社初の製品は微生物殺菌剤で、農場において作物の菌やカビの繁殖を抑えられるため作物の収量向上に寄与し、また感染防止により収穫後のフルーツ・野菜等の保存期間を延長させる効果があります。この製品は従来の微生物製品では得られない極めて高い活性を農場試験で確認しています。

微生物製品の製造にあたっては、発酵などの分野で深い知見を有するパートナーと協業しています。製造した製品はディストリビューターと連携し農家や包装業者などのエンドユーザーに供給します。

マネジメントインタビュー

Jamie Bacher
CEO

会社設立経緯

私の人生を左右する2つの出来事があった2016年に当社を設立しました。当時自分が将来何を実現したいかを日夜考えており、食や農業の分野に変革を起こす挑戦をしたいと思っていました。なぜなら、私の過去の経験から、その他バイオテクノロジー製品と比較し、食や農業分野の製品はより早く・また安価に市場投入ができると気付いたからです。同時に、共同創業となるAdam Arkin氏との運命的な出会いをしました。彼はLawrence Berkeley National LabとUC Berkeleyの教授であり、長年DNAシーケンシングを用いて環境中に存在する微生物同士の相互作用を解明する研究に従事してきました。

彼と議論した際、彼の技術が食・農業分野の長年の重要課題を解決し得る可能性を秘めていることに気付きました。更に、彼の技術で開発した製品を市場に投入するまでの道筋を非常に明瞭に描くことが出来たため、社会に極めて大きなインパクトを与えることが出来、同時にステークホルダーに新たな価値を創出すべく、Boost Biomes社を創業しました。

設立後の日々

当社設立後、最初の製品である微生物抗菌剤の開発に注力しました。最適な微生物の組合せを探索するためのR&Dや、製品開発、農場試験、また実験室と農場試験を橋渡しするトランスレーショナルスタディを重ねました。その成果として、製造・販売の有力パートナーとライセンスアウト契約を締結するに至りました。更に、グローバルの作物肥料会社(世界最大の窒素肥料メーカー)であるYara International社と栄養素の固定化・可溶化に関連する新製品の共同開発契約を締結しました。これらの成果もあり、当社はYaraがリードインベスターを務めたシリーズAを、UMIを重要投資家として迎えつつクロージングすることができました。

今後の事業展開

シリーズAをクローズできたことで、今後1-2年の事業マイルストン目標が明確になりました。まず当社は、最初の製品である微生物殺菌剤の販売契約数の増加を目指します。現状の販売契約は米国国内かつ高価値のフルーツや野菜に限られています。同時に、当社の共同開発パートナーはEPA(米国環境保護庁)での製品登録を進めています。もし当社が追加の製品販売契約を締結出来れば、EPA承認後の販売戦略の青写真を描くことが出来るようになります。日本でもパートナー探索を進めていきます。

並行して、当社は後継製品の開発を進め、製品パイプラインを拡充する予定です。我々は各地域の主力産物に応じた製品開発が可能なため、それぞれのニーズを充足させる製品を提供していきます。既に、作物感染防御を用途とする新規抗菌製品など複数製品を開発済みですが、当社は更に食の安全性や垂直農業などに関連した新製品の開発を進めています。新製品開発は、Yara International社などパートナーとの共同開発や、当社独自の開発で、今後1-2年を目安に6製品の計画を予定しています。

以上のハイレベルな目標をしっかり達成することが当社の中長期的な成功に繋がると信じています。当社が持つ極めて特徴的な技術を基に、農業分野では農薬代替を目指すとともに、当社技術は農業用途に限定されないため、微生物を利用できるあらゆる分野に幅広くアプローチしていきたいと考えます。是非日本企業の皆様にも興味を持っていただき、コラボレーションできれば幸いです。

UMI担当者コメント

当社の投資後サポートに従事しています。
取締役会への参加を通じてモニタリング業務を行うほか、日本の事業会社との協業サポートを通じ、当社の企業価値向上に貢献して参ります。
微生物の相互作用の解明を通じた農業用微生物製品の開発を行う当社は、近年の化学農薬からのシフトニーズに対応するポテンシャルを持っており、今後の発展を期待しています。

野中さゆり

プリンシパル