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2017.04.27
味の素株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 西井孝明)およびユニバ ーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(以下「UMI」)(本社:東京都中央区、代表取締役 月丘誠一)が管理運営を行うUMI1号投資事業有限責任組合は、東京工業大学(以下「東工大」)の元素戦略研究センター長の細野秀雄教授らと共に、科学技術振興機構(以下「JST」)の支援の下、細野グループが発明した優れた触媒を用いた、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムの実用化を目指す新会社である、つばめBHB株式会社(以下「つばめBHB」)を設立し2017年4月25日に事業を開始しました。
生体を構成するアミノ酸やタンパク質には窒素*1という元素が必ず含まれており、窒素は生命活動を維持するのに不可欠です。アンモニアは窒素源となる重要な化合物で、世界総生産量は年間1億6千万トンを超えています。そのうち約8割が肥料の原料として、残り約2割は様々な食品・医薬品の原料や化成品の原料として利用されています。
現在、アンモニアは100年以上前に発明されたハーバー・ボッシュ法(以下「HB法」)を用いて主に生産されています。HB法は空気中の窒素と、天然ガス等から得られる水素*2のみでアンモニアを合成することができる非常に優れた生産技術であり世界中で広く活用されています。一方、HB法は高温かつ高圧の反応条件が必要であり、高いエネルギー負荷がかかる大型プラントでの一極集中・大量生産を行わなければならず、設備投資が高額になるという課題があります。加えて、アンモニアを生産拠点から世界各地に点在する需要地に輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから物流コストが非常に大きいことが課題となっています。
この課題を解決するため、細野教授らはJSTの戦略的創造研究推進事業ACCEL*3「エレクトライドの物質科学と応用展開」(研究代表者:細野秀雄、プログラムマネージャー:横山壽治)の研究開発において、低温・低圧条件下で高効率のアンモニア合成が可能な、HB法で用いられる触媒とは全く異なる触媒を発見・発明しました。低温・低圧の反応条件であることから、従来難しいとされた小型のプラントでの生産が可能となります。将来、この技術の実用化により、世界で初めてとなる、必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する、「オンサイトアンモニア生産」モデルの実現が期待されます。
味の素㈱は、グルタミン酸をはじめとする多種のアミノ酸等の発酵素材の生産において多くのアンモニアを原料として利用しており、従前より細野教授らの発明・発見をアンモニアの安価・安定供給を実現する画期的な基本技術として高く評価し、本技術の実用化に関する共同開発を実施してきました。味の素㈱は、つばめBHBと協力して自社工場でのオンサイトアンモニア生産の実現を図り、発酵素材のコスト競争力を高めるドライバーとする他、発酵副原料の生産および輸送におけるエネルギー消費や環境負荷を抑えることで地球との共生を目指します。
東工大の細野教授は、つばめBHBの技術アドバイザーを務め、新触媒の実用化を支援します。また東工大とつばめBHBとの共同研究により、高効率の触媒の研究開発をさらに推進します。またJSTおよび東工大はつばめBHBに対して、オンサイトアンモニア生産技術の基礎となる細野グループの開発による新触媒の特許のライセンスを行い、つばめBHBの事業をサポートします。
UMIはつばめBHBに対して、今後の事業推進に必要な資金を供給するとともに、取締役等の経営メンバーの派遣、事業開発体制の強化等の経営サポートを行います。UMIは上記の取り組みを通じて、素材・化学分野における有望なアカデミアシーズの社会実装の成功事例の創出を目指し、当該分野におけるエコシステムの形成に貢献します。
つばめBHBは、味の素㈱の国内外発酵素材工場に本技術を導入し、2021年頃を目処に世界初のオンサイトアンモニア生産の実用化を図ります。将来的には味の素(株)に加え様々なパートナー企業と連携し、農業肥料、食品・医薬品、化成品等への適用拡大を図り、より環境に配慮したサステナブルな生産システムの実現を通じて社会への貢献を目指します。
*1 窒素ガスは空気の約78%を占め、窒素は地球上のほぼ全ての生物にとって必須の元素。
*2 宇宙で最も多く存在する元素。近年では燃料電池車の燃料等クリーンエネルギーとしても着目されている。
*3 JSTの事業の一つで、世界をリードする顕著な研究成果のうち有望なものの、企業などではリスクの判断が困難な成果を抽出し、プログラムマネージャーによるイノベーション指向の研究開発マネジメントにより、企業やベンチャー、他事業等に研究開発の流れをつなげている。