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素材・化学分野に特化したベンチャーキャピタル(VC)のUMIベンチャーズは、ESG課題に取り組むスタートアップへ投資・伴走支援を行っています。UMIベンチャーズ投資先のJEPLANでは、ケミカルリサイクル技術により“何度でも循環するペットボトル”を実現しています。石油資源への依存を大幅に減らし、石油資源課題の解決策となる技術です。
ペットボトルを再びペットボトルにできるJEPLANの独自技術について、JEPLANグループのペットリファインテクノロジー株式会社 代表取締役執行役員社長 伊賀さんにお話を伺いました。
本記事では、ケミカルリサイクル技術の仕組み、リサイクルにあたっての自治体連携、再生PET樹脂「HELIX™」の採用事例をご紹介します。
ペットリファインテクノロジー株式会社 代表取締役執行役員社長 伊賀 大悟さん
ペットボトルリサイクルの課題
日本国内で年間65万トン以上が消費されているペットボトルは、自治体や事業者によって9割が回収されています*1。回収されている=リサイクルによって再び使われていると思われがちですが、再びペットボトルに戻るのは回収全体量の約3割にとどまっています。
理由は、普及しているリサイクル方法が「メカニカルリサイクル」と呼ばれる方式で、細かく砕いて洗浄する物理的なやり方のため、加熱や粉砕を繰り返すと不純物が蓄積してしまうといった課題があるため、リサイクルできる回数に限度があると言われています。
JEPLANでは、独自の「ケミカルリサイクル」技術を用いて、回収したペットボトルをペットボトル原料として使える、再生PET樹脂「HELIX™」に再生し、“ボトル to ボトル”を実現しています。
*1 PETボトルリサイクル推進協議会「回収率推移」https://www.petbottle-rec.gr.jp/data/transition.html
JEPLANのケミカルリサイクル
JEPLANの「ケミカルリサイクル」は、工程中に使用済みのペットボトルに含まれる不純物を取り除けることが特徴です。ペットボトルの原料はポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)で、分子が鎖状に繋がったポリマーです。使い終わったペットボトルは、着色されていたり、水洗いでは取れない添加物が付着していたり、屋外にあるゴミ箱などでは土や砂など様々な不純物が混ざった状態で、回収されます。PETを分子レベルで分解して不純物を取り除き、何度リサイクルしても品質劣化することなく、再び石油由来のものと同等のPETに戻せるのが、JEPLANのケミカルリサイクル技術です。
<ケミカルリサイクルの工程>
自治体や企業で回収されたペットボトルは、粉砕され、フレーク状になった状態で、全国各地よりJEPLANの工場(神奈川県川崎市)へ届く。
PETフレークの貯蔵エリア
【解重合】
PETフレークをエチレングリコール溶剤で、熱をかけて溶かす。分子鎖をほどく(解重合)ことで、モノマーであるBHET(Bis(2-hydroxyethyl) terephthalate)が生成される。BHETは石油からPETをつくる際にも経由する中間体で、再び高品質なPETへ戻す土台となる。
【脱色金属イオン除去】
解重合後の状態では、ラベルやキャップ由来の別のプラスチックや、ペットボトルを着色させた色素、樹脂を製造する際に添加された金属触媒、土砂など、多くの不純物が含まれる。脱色と金属イオン除去を行い、目に見えない微量な成分まで取り除くことで、透明度と純度を高める。
【モノマーと溶媒を分ける】
解重合の工程で、BHETとエチレングリコール溶媒は高温で溶け合っているため、急速に冷却することで、BHETを結晶化させたあと圧力をかけてエチレングリコールを搾り取り、さらに残留するエチレングリコールを蒸発分離(沸点差)で飛ばし、最終的に分子蒸留工程を経て、高純度のBHETを精製する。
分離されたエチレングリコールは、解重合の工程で再利用する。
<ここまでがJEPLAN独自のケミカルリサイクル技術>
左の回収ペットボトルから、ケミカルリサイクルの工程。右から2番目が再生PET樹脂「HELIX」
<以降の工程は石油からPET製造する工程と同様>
【重合工程】
BHETを重合し、飲料用ペットボトルや化粧品用ペットボトルなど求められる強度まで品質を調整し、PET樹脂が完成する。
JEPLANのケミカルリサイクルプロセス
自治体連携、メカニカルリサイクルとの組み合わせ共存も
全国63自治体(2026年3月時点)と連携し、自治体が回収したペットボトルの受け入れをJEPLANで行っています。
日本のペットボトルのリサイクル率は約85%*2と高いものの、ペットボトルに戻っているのはそのうちの3分の1で、食品トレイ、繊維製品、文房具など、さまざまな製品に使われています*3。消費者の皆さまが丁寧に分別しているペットボトルは、きれいな状態のため、再びペットボトルにするのに最適であり、“ボトル to ボトル”に賛同して、JEPLANグループと連携する自治体が年々増えています。
自治体によっては、既にペットボトルのメカニカルリサイクル事業者に依頼しているところもありますが、メカニカルリサイクルで出た残渣(処理できなかった残りかす)をJEPLANで受け入れ、ケミカルリサイクルで残渣から不純物を取り除いて再生PETにする取り組みも行っています。メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルの組み合わせにより、全体としての資源循環の効率があげられるのです。
JEPLANでは、これからさらに多くの自治体や、メカニカルリサイクル事業者と連携して、資源循環型社会の実現を図ります。
*2 PETボトルリサイクル推進協議会「リサイクル率の算出」https://www.petbottle-rec.gr.jp/data/calculate.html
*3 PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2024」https://www.petbottle-rec.gr.jp/nenji/2024/2024.pdf

HELIX採用製品
JEPLANのケミカルリサイクル技術によって製造された再生PET樹脂には、「HELIX™」というブランド名が付いています。HELIXは、純度の高いPETのため、石油から製造するPETと遜色がないため、ペットボトル製品やPET容器を取り扱う事業会社で、採用が進んでいます。
アサヒ飲料の大型ペットボトルや、キリンビールのタップマルシェのクラフトビールに採用されるなど、HELIXは大容量、高耐圧に対応できる素材です。また、化粧品ブランドでは、アテニア、イプサ、カネボウ化粧品、花王、コーセー、資生堂、ファンケルが、化粧品容器に採用しています。
採用企業・製品ラインナップ詳細はこちら https://helix.pet/blogs/case-study
また、JEPLANオリジナルの「BRING BOTTLE WATER」のペットボトルも、HELIXでできています。HELIXは、石油由来のバージンPET樹脂製造とLCA(ライフサイクルアセスメント)による比較を行った結果、CO₂排出量を約47%削減*4できるため、ラベルにわかりやすく記載しています。なお、「BRING BOTTLE WATER」は販売されており、オリジナルラベルにも対応しています。
*4当社技術については、2019 年度に環境省がデロイトトーマツコンサルティングに委託しLCA調査(*5)を実施した。その結果、石油由来PET樹脂と比較し45%の二酸化炭素削減効果があることが示されている。
*5 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社.「令和元年度 ケミカルリサイクルの二酸化炭素削減効果と脱炭素社会システムとしての評価検証委託業務 成果報告書」.令和元年度環境省委託業務. 2020,3.153p
ケミカルリサイクルの二酸化炭素削減効果と脱炭素社会システムとしての評価検証委託業務成果報告書 令和元年度|書誌詳細|国立国会図書館オンライン (ndl.go.jp)
これをもとに当社工場において採用している東京電力(*6)の電源構成を加味すると47%のCO2削減効果となる。
*6 https://www.tepco.co.jp/ep/power_supply/2019.html
JEPLANオリジナルの「BRING BOTTLE WATER」
UMIでは、「BRING BOTTLE WATER」を来訪されたお客様へお出ししています。JEPLANの“ボトル to ボトル”の技術は、サーキュラーエコノミーを実現しています。身近なところから、資源課題に取り組むスタートアップとその技術を知っていただく機会になればと考えています。
BRING BOTTLE WATER、JEPLANに関するお問い合わせ:https://bringbottlewater.jp/

