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UMIベンチャーズは、素材・化学産業に特化したベンチャーキャピタルとして、スタートアップ投資に加え、アカデミア・大企業・金融機関をつなぐプラットフォームを構築しています。本記事では、素材・化学産業特有の課題や、UMIベンチャーズの投資戦略、事業創出支援の取り組みを紹介します。
素材・化学産業の課題を乗り越えるためのUMIベンチャーズ
素材・化学産業は世界的な成長産業であり、日本においても産業別GDPの3分の1を超える重要な基幹産業です。日本には、アカデミアの優れた技術シーズや、技術力の高い大企業・中堅企業が多く存在しており、一見すると将来は明るいように思えます。
しかし、素材・化学産業全体を見渡すと、「新しい事業が継続して生まれにくい」という業界共通の閉塞感が長年存在しているのが現実です。
この課題を解決するために、素材・化学産業に特化したベンチャーキャピタルとして、2015年10月ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(UMI)が設立され、2026年1月、UMIの分社化により、ベンチャーキャピタル業務は、UMIベンチャーズ株式会社に移管されました。
UMIベンチャーズは、単にスタートアップ投資を行うだけでなく、業界全体で新事業を継続的に生み出していくために、アカデミア、スタートアップ、大企業を結びつけていく、プラットフォームの役割を担っています。
素材・化学産業のスタートアップが越えなければならない壁
素材・化学産業のスタートアップには、他の業界とは異なる、この分野特有の難しさがあります。それは、「スケールアップに要する時間」と「長いサプライチェーン構造」の2つです。
1. スケールアップに要する時間
実験や条件検討を伴う素材開発においては、ラボからパイロット、デモ生産、量産へと、段階を踏んだスケールアップが必要です。1つの段階をクリアするだけでも1〜2年を要し、全体では5〜10年という膨大な時間がかかります。また、設備や人員も拡充していく必要があるため、資金も多額にかかります。
2. 長いサプライチェーン構造
素材・化学産業は長いサプライチェーンの川上に位置します。消費者に到達するまでに、川下の部品メーカーや最終製品メーカーなど複数社を介するため、真の顧客ニーズを把握することが困難になります。
スケールアップまでの時間とサプライチェーンの課題が掛け合わさることで、素材・化学産業特有のタイムラグが生じるのです。10年の歳月をかけて製品化・量産化に漕ぎつけて・・できても、その間に市場が変化し、顧客に届くころには他社に追随されてコモディティ化している、あるいは必要とされないという事態が起こり得るのです。
このような背景がある素材・化学産業において、スタートアップが成功するためには、素材の用途が広く応用できるという強みを生かし、普遍性が高く中長期的なに社会課題(メガトレンド)を解決していける技術であることが重要です。
歴史を振り返れば、1950〜70年代のモータリゼーション期には鉄鋼に加えてタイヤ用ゴムやプラスチックなどの石油化学製品が、1980年代以降の情報化社会では半導体やコンピュータ向けの機能性化学品が産業を牽引してきました。そして現代の成長分野は、脱炭素に向けた環境材料、AIインフラを支える低消費電力化や半導体材料、そして地政学リスクに対応する重要資源リサイクルや代替技術です。
素材・化学産業の製品や技術は実用化に長い時間がかかるからこそ、スタートアップには他社が容易に追随できない尖った技術シーズが求められます。そして、10年20年先も普遍的な社会課題を見極める力も重要です。これらは、UMIベンチャーズが投資先を選定する上で重視するポイントです。
素材・化学産業の新事業創出プラットフォームとして
UMIベンチャーズが行うのは、スタートアップ支援だけではありません。アカデミア、スタートアップ、大企業や金融機関をつなぎ、新事業創出を促進するプラットフォームとしてUMIベンチャーズは機能しています。
アカデミアのシーズ探索と起業支援
UMIは産業技術総合研究所(産総研)や物質・材料研究機構(NIMS)と包括的な戦略提携を結んでいます。また、UMIベンチャーズでは主要国立大学などと定期的にコミュニケーションしており、大学や研究機関がもつシーズの事業化支援を行っています。
さらに、台湾のITRI(工業技術研究院)、イスラエルやインドのトップ大学といった海外の主要機関とも戦略的パートナーシップを構築し、グローバルな最先端科学・技術にアクセスできる体制を整えています。
大企業を巻き込んだエコシステム形成
UMIベンチャーズが運営するファンドには30社以上の大手企業が参画しており(LP:Limited Partner)、200社を超える企業のマネジメント層に直接アクセスできるネットワークを有しています。この強みを活かし、経済産業省をはじめ、行政機関などとも連携しながら、例えば大手化学メーカーのコンビナート跡地や空き地をスタートアップのスケールアップ拠点として活用する産業まちづくりを推進しています。
スタートアップは、大企業が持つ既存の施設やインフラが利用できるため、莫大な投資やリソースを割かずに、低コストでスピーディーにスケールアップが叶うことで、いわゆる死の谷を乗り越えることができます。
大企業からのカーブアウト支援
素材・化学企業において継続的な事業ポートフォリオの転換は経営成功の要諦です。事業の選択と集中が必要となる中で、事業テーマをつぶさに見ると、社内では生かしきれず、埋もれている優れた新事業テーマや技術も少なくありません。
UMIベンチャーズは、こうしたシーズを社外に切り出し、外部資金やリソースを入れて花開かせるカーブアウトの支援もしています。自社内で無理して続けるより、オープンな環境で事業化を進めたほうが、マネタイズにつながります。業界全体としても、健全なオープンイノベーションと活性化をもたらすことになります。
<参考動画> 素材・化学産業のプラットフォームとして、UMIベンチャーズが行なっている内容を紹介しています。
UMIベンチャーズの投資戦略とハンズオン支援
UMIベンチャーズは、スタートアップ投資において、以下の3つを最初の見極めポイントとして重視しています。
- 10〜20年の長期的な時間軸の中で、普遍的に求められる社会課題を解決するか
- グローバルでオンリーワン・ナンバーワンのサイエンスに裏付けられているか
- 技術が完成した際、顧客にとって「絶対に買う」という本当のうれしさに直結しているか
これらを満たすスタートアップに重点的に投資するため、1ファンドあたり約15社に投資先を厳選しています。特に、最もハードルが高い、量産手前の製品開発・生産技術ステージに支援を注力し、死の谷の突破を狙います。
その際、成功を左右する要素には、以下の4つがあると考えています。
- 技術の強さ
- 市場ポテンシャルの大きさ
- CEOを中心としたマネジメントチームの強さ
- リード投資家によるファイナンス支援
特に鍵を握るのが、一貫性のあるCEOの存在です。UMIベンチャーズが求めるCEO像とは、事業をやり遂げるという情熱やエネルギーをもちつつ、自分の限界を理解して他者を巻き込めるチームビルディング力がある人物です。順風満帆に進まない状況においても、課題や弱みを誠実にさらけ出し、一貫した行動や考えを示しながらコミュニケーションを取ることがなによりも大切です。この姿勢は、投資後の信頼関係に直結します。
投資後は、初期の事業計画策定から個別の経営課題の解決、中期以降の事業拡大やガバナンス強化など、成長に合わせたハンズオン支援を行います。UMIベンチャーズが有する国内外の大企業やアカデミアのグローバルなネットワーク、さらにはスタートアップ同士の横のつながりを提供し、事業実現のために、パートナーとして伴走します。
ファンド出資企業とのコミュニケーション
UMIベンチャーズは、LP企業とのコミュニケーションも重視しています。毎月、LP企業とミーティングを開催しており、大学のシーズ技術や成長期にあるスタートアップなどを幅広く紹介し、最新の技術トレンドやビジネスモデルについてディスカッションする場を設けています。「競合他社やファンドがその技術をどう見ているか」という多角的な知見を共有できるのが大きな特徴です。
参加者からは、起業案件やカーブアウト案件、海外パートナーからの紹介案件など、世の中にまだ存在しないスタートアップ予備軍も含めてアクセスできること、UMIのグローバルなネットワークを活用して自社の新事業に活用できることを評価いただいています。
また、LP各社に専任キャピタリストを置いており、スタートアップ投資やM&A、新事業創出の相談を受ける役割を担います。各社のニーズに合わせ、ワークショップの開催や、特定のテーマで技術探索を行う個別プロジェクトの発足など、出資企業のポートフォリオ転換を社外からサポートします。
今後の展望
UMIベンチャーズが見据えるのは、10年、20年先の社会課題を解決し、世界を変える日本発のスタートアップがユニコーン、そしてデカコーンへと育っていく未来です。これを実現するために、グローバルの業界プレイヤーや、インパクト投資を重視する海外の機関投資家との連携を深めていきたいと考えています。
日本の強みである素材・化学と、海外企業が強みとする製造、システムや流通を組み合わせるなど、国境を越えるサプライチェーンのシナジーを創出することが今後は求められると考えています。UMIベンチャーズは、日本の素材・化学産業が世界を勝ち抜くための活動を広げてまいります。
UMIベンチャーズへのご相談・お問い合わせ:https://www.umi.co.jp/contact/
(サイエンスライター 島田 祥輔)
※本記事に掲載されている情報は、掲載時点の内容です。

